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新たな雇用対策基本計画の策定を!

 国民生活の根幹をなす雇用を取り巻く環境が厳しさを増している。
 平成14年の完全失業率は5.4%と過去最悪。直近の完全失業者数は331万人。その内、世帯主の失業者数は105万人にも達している。
 その上、政府が推進しようとしている不良債権処理の加速は、内閣府の試算でも離職者65万人、失業者22万人の新規発生を招く。
 そのような前提に立つ平成15年度政府経済見通しで、「完全失業率は5.6%程度に上昇」と政府自ら認めざるを得ないほどに、今年の雇用情勢はさらに深刻である。
 私は、ここで政府に現行雇用対策基本計画を廃し、新たな計画を策定するよう求めたい。
 完全雇用の達成を目的とした雇用対策法の第8条は、政府の策定する経済計画と調和した雇用対策基本計画(以下、雇用計画と略す)の策定を国に義務づけている。
 同法の趣旨に従って、昭和42年3月の第1次雇用計画策定以来、現行の第9次まで、政府の経済計画の策定に合わせて雇用計画が改定されてきた。現行の雇用計画も、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の閣議決定(平成11年7月)を受け、翌8月に決定されたものである。
 このような経緯にもかかわらず、政府は、昨年1月の同経済計画の終了と新たな経済計画たる「構造改革と経済財政の中期展望」の閣議決定後も、それに連動すべき雇用計画の改定を頑なに拒否し続け、今日に至っている。
 策定後、既に3年半が経過した雇用計画への固執は、経済社会情勢の激変の中では全く無意味であり、見直しは不可避である。
 まず指摘すべきは、現行の経済計画が経済変動に対応すべく、毎年度改定するローリングプランとなっているのに比べ、10年間が対象の雇用計画が著しく柔軟性を欠いていることである。このような雇用計画は、計画のあり方の基本において、経済計画と調和するものではなく、雇用対策法に全く反している。
 また、雇用計画には現状にそぐわない認識や表現が散見され、政府計画の名には程遠い。
 例えば、現在では60歳以上を指す高年齢層は、同計画においては55歳以上とされている。また、2003年を迎えた現在、「2001年度末までの臨時応急の措置の活用」も空しく響くばかりである。さらに、昨年3月で既に失効した某法律に基づき、との表現を見るに至っては、まさに開いた口がふさがらない。
 もとより、計画をつくれば雇用が自動的に生まれてくるものではない。しかし、雇用問題に本気で取り組むならば、まず基本から検討し直そうと思うのが普通ではないか。
 人が動いて「働く」と書くことが端的に示すように、人間にとって労働は、生活の基本をなす根源的な価値を有している。
 雇用の確保は、政府の重大な使命である。およそ国の政策の最大の目標は、国民全体の雇用の確保にあると言っても過言ではない。
 坂口厚生労働大臣は「国全体で雇用を重視した社会づくりに取り組む必要がある」と語り、「雇用重視型社会」の実現を訴えている。
 今日の厳しい雇用情勢の克服に対する政府の強い意志を示し、国民への連帯のメッセージとなるような、新たな雇用計画を政府が速やかに策定するよう、強く求めたい。
          2003年5月
参議院議員 辻 泰弘

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