TOPに戻る 一覧に戻る

平成15年度政府予算に対する見解
― 参議院本会議討論 ―

◎当日の本会議での発言議事録
第156通常国会 本会議議事録より 辻泰弘発言部分
(2003.3.28)


○辻泰弘君 私は、民主党・新緑風会を代表し、平成15年度予算3案に対し、反対の立場から討論を行います。
 まず、討論に当たり、イラク問題に対する小泉内閣の姿勢を厳しく糾弾しなければなりません。
 去る3月20日、アメリカは、新たな国連決議のないまま、イラクに対する先制武力攻撃を開始いたしました。今回のアメリカの行動は、国際紛争を正義と国際法に従い平和的手段によって解決することを目的とした国連憲章の精神に真っ向から反するものであり、戦後60年にわたって築き上げてきた国際協調体制を根本から揺るがすものであります。にもかかわらず、これに対して無批判なまま、おろおろさまよい歩いた小泉内閣の対応は、正に理想なき、主体性なき対米追従外交と断ぜざるを得ません。
 さらに、アメリカのイラク攻撃は日本経済に多大な影響を与えるとともに、アメリカへの支持の表明により、日本がテロの対象となり、国民の生命、安全を危険にさらすおそれをはらんでいます。にもかかわらず、小泉総理は、世論は当てにならないと公言し、また、その場の雰囲気で決めるなどと信じられない言辞を弄し、国民に十分な説明を行わないままに終始したのであります。
 総理は、アメリカ支持について、悩み抜いての結論じゃない、元々決めていたんだと言われたようですが、元々決めていたのなら、何ゆえ最初から国民に語ろうとしなかったのでしょうか。一連の経過の中で見られた総理の対応は、およそ民主主義国家の総理大臣にはふさわしくない、欺瞞に満ちた、極めて無自覚、無定見、無責任かつ独断的な姿勢と言わなければなりません。
 また、小泉内閣の閣僚の何人もが、閣僚どころか政治家としての資質を疑う言動を繰り返してきたことも指摘しなければなりません。
 昨年入閣した大島農水大臣は、口利き疑惑、秘書の献金疑惑、談合業者からの政治献金受領、不明朗な会計処理など、鈴木宗男議員に匹敵する疑惑のたまり場と言わざるを得ません。その上、自らの疑惑隠ぺいのために衆議院法制局を利用したことは、三権分立に触れる禁断の実に手を付けたあるまじき行為であり、閣僚としての自覚のなさには開いた口がふさがりません。
 また、隠ぺいを繰り返す法務省の体質を根本的に変えようとの意欲を持たない、人権擁護の責任者としての自覚と能力を全く欠いた森山法務大臣、国会でははぐらかしの不誠実な答弁を続けながら、国連ではアメリカ支持をいち早く打ち出す2枚舌外交の川口外務大臣、ETFは絶対にもうかるとネズミ講もどきのセールストークで閣僚にETF購入を勧めておきながら自らは買わず、また、国会では本音が言えないとして、本音を語るための本を経済財政政策・金融担当大臣の名で堂々と出版した竹中大臣など、理念も理想も哲学も節操もなく、日本の国のリーダーとしては余りにも恥ずかしい閣僚が多過ぎるではありませんか。
 さらに、小泉総理自身、内閣発足以来、派手なスローガンはぶち上げるものの、政策的リーダーシップの欠如から実行が全く伴わず、大相撲の新横綱も顔負けの、丸投げ、先送り、見掛け倒しといった極めて無責任な技の連発に終始し、ついには政治家の命ともいうべき公約さえも大したことではないと言い放つに及びました。そこには、日本の将来と国民生活に責任を持つトップリーダーとしての自覚も責任感もなく、良心のかけらも感じられないのであります。
 かかる小泉内閣の下での無為無策により、株価が20年ぶりに8,000円を割り込むなど経済は大きく落ち込み、また、財政についても、国債依存度が戦後最悪の44.6%と破綻の極みに至っています。正に、現下の情勢は、総理の目指した改革なくして成長なしではなく、改革なしなし成長なしと言わざるを得ません。
 以下、本予算に反対する主な理由を具体的に申し述べます。
 反対の第1の理由は、税制の抜本的改革を強調してきたにもかかわらず、ほとんどを租税特別措置で措置するなど、継ぎはぎの税制改正の上塗りを行うとともに、大幅な増税超過となる点であります。
 政府は設備投資減税など1兆8,000億円の先行減税が経済活性化に資すると強弁しておりますが、減税が企業を対象とした時限的な措置であるのに対し、増税は配偶者特別控除の廃止、たばこ、酒税の税率引上げなど、直接家計の負担増につながるものが大半で、しかも、それらは恒久的措置によるのであります。我々はこのような国民生活軽視の政策を容認することはできません。
 反対の第2の理由は、社会保障の負担の大幅な増加により、国民に負担をしわ寄せする予算案となっている点であります。
 総理が厚生大臣時代に平成12年までに抜本的に見直すと公約した医療制度の改革はいまだに行われておりません。その結果として、本予算案では、医療費の自己負担3割への引上げなど、計2兆円もの社会保障関連の負担が国民にツケ回しされております。現在の不況下において改革先送りのツケを国民に対する更なる社会保障の負担増に求める予算案には強く反対するものであります。
 反対の第3の理由は、雇用対策、中小企業対策などのセーフティーネットの整備が不十分な点であります。
 政府は、530万人の雇用創出を掲げながらも、そのための具体策は何ら講ずることなく、また、雇用対策の基本を成す基本計画の改定にも取り組んできませんでした。その結果、失業率は過去最悪を記録し、若年層では10人に1人が職に就けない深刻な雇用情勢にあるにもかかわらず、本年度予算案では雇用対策予算をわずかに上積みするにとどまっております。これでは400万人近い失業者への対応としては焼け石に水であります。
 また、中小企業対策費も、多くの中小企業が金融機関の貸し渋り、貸しはがしに苦しむ極めて厳しい状況に目を向けない、現状への配慮を欠いた予算と言わざるを得ないのであります。
 反対の第4の理由は、従来型の歳出構造に変化がない点であります。
 省庁間、部局間の縦割り構造は根強く残り、めり張りを付けた予算配分は掛け声倒れに終わったと指摘せざるを得ません。既得権を温存した従来型のばらまき公共事業は一向に改善されておらず、政府の怠慢を厳しく指摘するものであります。
 反対の第5の理由は、甘い税収見積りに基づく予算である点であります。
 政府の税収見積りが過去10年間で当初の税収を達成したのはわずか3回にすぎません。過大見積りの連続で、その穴埋めのため、補正で多額の特例公債発行を余儀なくされてきたのであります。抜本的に税収見積りを見直すことなく、従来の手法で見込んだ15年度税収に基づく予算を信頼することなど到底できないのであります。
 小泉総理は、内閣の発足当初、1度や2度失敗したっていいじゃないかと軽く言われました。1度の失敗が倒産、失業などを経て自殺や一家離散、ホームレス生活などに至ることもあることに思いが至るならば、一国の総理としては到底口にできない言葉でした。大手企業倒産の報に接しては、私の改革が順調にいっている証拠だと公言し、司法のルールにのっとって訴訟を起こした方々に対しては、世の中にはおかしい人がいるもんだと言い放った小泉総理。森前総理が、小泉純ちゃんには極めて冷たいところがあると語ったと報ぜられましたが、その言葉は正に本質を言い当てていると思わないわけにはまいりません。
 国民生活の実情に心から真摯に目を向けることなく、また、国民に語り、国民とともに歩もうとする姿勢を全く持たない、政策的定見とリーダーシップが欠如した総理の下での政策運営によっては、景気回復も、国民生活の向上も、未来への明るい展望も到底望むべくもありません。

                  :
                  :

○辻泰弘君(続) 総理、今の政策運営の継続では国民が不幸です。
 この上は、小泉内閣に一刻も早く退陣していただくことこそがデフレからの脱却と国民生活安定の最善の策であることを申し上げ、私の反対討論を終わります。




TOPに戻る 一覧に戻る