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平成12年度決算に関する小泉総理大臣に対する質問
― 参議院本会議初登壇 ―
(2002.5.8)  


○辻泰弘君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました平成12年度決算に関連し、総理並びに関係各大臣に御質問申し上げます。

 平成12年度の日本経済を顧みるとき、同年度に最悪を更新した失業率と倒産負債総額に象徴される景気低迷が今日まで続いていることを改めて痛感いたします。  政府は、サプライサイドの構造改革は、民営化、規制改革、不良債権の処理、将来不安の除去を通じて、消費拡大、起業促進、ひいては景気回復につながると主張してこられました。しかし、消費回復の兆しはなく、不良債権の処理も進まず、将来不安がむしろ増大する中で、どうして景気が回復するというのでございましょうか。
 就任以来1年。総理は、改革なくして成長なしとおっしゃってこられましたが、今やそのスローガンは色あせ、改革なくして成長なしではなく、正に改革なしなし成長なしと言うべき状況にございます。
 私は、今日の景気低迷長期化の大きな要因として、小泉総理の経済に対する危機感のなさ、国民生活に対する温かみのなさ、政策的見識とリーダーシップの欠如を指摘しないわけにはまいりません。
 4月24日の経済財政諮問会議で塩川財務大臣は、1年たっても具体策が見えない、減税の優先分野の決定や改善の兆しがないデフレへの対応など具体策が必要だ、サミットで基本方針だけ言っても世界は無視する、総理の指示が必要だと、総理にかみ付いておられますが、この点については我が意を得た思いでございます。
 総理は、同会議で、6月サミットでは着実に進んでいることを私は言うと発言されましたが、何が着実に進んでいるのでしょうか。また、構造改革が景気回復をもたらすプロセスを自らの言葉で語ってください。さらに、6月末のサミットまでにどのような経済活性化策を講ずるおつもりなのでしょうか。雇用創出にはどう対処されるのでしょうか。
 まず、以上の4点、総理にお伺いいたします。
 平成12年度決算における国債発行額は33兆円。3年連続の30兆円台でした。14年度予算の際、塩川大臣は30兆円枠の変更は小泉政権の崩壊につながるとまで言われましたが、今や、15年度財政運営の新方針を6月中にまとめると主張されております。小泉政権の崩壊も近いので余り本気で考えなくてよいと思われたのでしょうか。あれほどまでにかたくなだった方針の変更を、塩川財務大臣、御説明ください。
 平成12年7月には、政府税調から公平、中立、簡素の3原則を掲げた中期答申が示されました。本年3月の諮問会議では、中立か活力かが議論となり、総理の主導で中立の理念堅持が確認されております。しかし、経済活性化のための税制改革を唱える総理のお考えに符合するのは、中立ではなく活力なのではありませんか。総理の決断が求められております。
 税制改革の理念、先行減税の可否、減税の優先分野、財源、実施時期について、総理の基本方針をお伺いいたします。
 また、諮問会議と政府税調の権限と決定対象領域、税制改革の重点、減税財源の確保策について、財務大臣、経済財政担当大臣の御見解をお示しください。
 平成12年度に日銀は、消費者物価上昇率がゼロ以上となるまでの金融の量的緩和を決定しましたが、経済財政白書は効果に保証なしと分析しております。IMFの世界経済見通しは、2%以下のインフレ目標が持つデフレスパイラルの可能性を指摘しております。竹中大臣は、現況下でのインフレターゲットの妥当性についていかがお考えでしょうか。
 このインフレターゲットに関連し、総理にお伺いいたします。
 京都大学の中西輝政教授は、小泉総理の言葉は内実に比べて160%言葉のインフレがあると語っておられます。総理は、御自身のお言葉にインフレターゲットは設定しておられるのでしょうか、お教えください。また、最近は、党の執行部にお任せ、国会でよく議論をと、むしろデフレ傾向だとの指摘がございます。さらに、さきの郵政法案をつぶすのなら小泉内閣をつぶすのと同じだとの発言には、言わばデフレスパイラルへの突入を予感させる趣がございます。
 総理に8点お伺いいたします。
 総理は、自らの目指す改革が普遍的価値を有するものとお考えでしょうか。
 先日の、郵政民営化の先進国、ニュージーランドの首相からの民間のポストはほとんどだれも使わないとの説明は、郵政民営化が経済改革だとの総理の信念をより強めるものとなったでしょうか。
 また、平成12年までの抜本改革を約束したときの厚生大臣として、医療制度の実質的な改革にもっと責任をかけ、精力を尽くすべきではありませんか。
 さらに、総理にとって抵抗勢力とは何でしょうか。
 首班指名で小泉純一郎と書いた与党内からの、我々を抵抗勢力に仕立てて物事を進める手法を改め、胸襟を開いてほしいとの声に私個人は共鳴するものを感じますが、総理はどのように思っておられるでしょうか。あわせて、衆議院解散、内閣改造、会期延長に対するお考えをお聞かせください。
 平成12年の文部省の方針に始まる少人数学級の公的取組は、現在、各自治体で精力的に行われ、良い結果が伝えられています。ブレア首相は、3つの重要な政策として、教育、教育、教育と訴えました。米百俵を語る総理から教育についての信念を、文部科学大臣から少人数学級実現の方針をお伺いいたします。
 また、親の失業に伴う子供の退学、進学断念の増加にはどう対処されるのでしょうか。11年度に創設の緊急採用奨学金にとどまらず、高校生も有利子奨学金の対象とし、かつ随時採用にすべきだと考えますが、遠山大臣、いかがでしょうか。
 その他、平成12年度には、予算総則で消費税収の使途を基礎年金、老人医療、介護に限る旨が明記されるとともに、4月からの介護保険がスタート、改正後の国民年金法が施行、また民事再生法の施行による新たな倒産法制も始動しております。同時に、アメリカによる鉄鋼分野のセーフガードの発動、気候変動枠組み条約第6回締約国会議の開催、製造業の海外生産の加速、地方財政での統合補助金の創設、東京都の銀行への外形標準課税の施行、郵政公社化を定めた行革大綱の閣議決定、これらの年でもありました。
 総理にお伺いいたします。
 益税解消など現行消費税の改革、介護保険制度の見直し、次期再計算における年金改革の基本理念、基礎年金の国庫負担2分の1への引上げ、労働債権が租税債権より低位に設定されている現行法体系の見直し、3月にブッシュ政権が発動した鉄鋼セーフガードに対する最終的決断、京都議定書発効への努力、いわゆる空洞化対策と物づくり基盤の強化、地方への財源移譲と補助金の統合化・一括化、「銀行業等に対する東京都の外形標準課税について」の閣議了解に対する現内閣の見解、郵政法案の与党との協議と成立の見通し。
 以上11点、いずれ劣らぬ当面の重要政策課題、総理から直接政府の方針を御説明ください。
 平成12年度、小泉総理は森派の会長をお務めでした。当時の森総理は靖国参拝はされず、春、秋の例大祭、終戦記念日に代理の方が参拝しておられます。
 昨年8月13日、靖国神社を参拝された小泉総理と国を被告とする福岡地裁での訴訟において、国は、総理の参拝は内閣総理大臣の資格で行われたものではなく、公務員としての職務行為として行われたものではないと主張し、私人の立場での参拝と位置付けております。公私の区別は意地でも言わないと言われた小泉総理、総理は、この国の主張をどう受け止め、どう評価しておられますか、お答えください。
 また、4月11日、中国で総理は、靖国参拝なんて大した問題じゃないと発言しておられます。いかなる認識によるものか、御説明ください。
 その後、4月21日の総理の靖国参拝を受けて、29日、江沢民中国主席は、小泉総理は靖国参拝のことを簡単に思ってはいけない、政治家は信義を守らなければならないと述べていますが、総理はこれをどう受け止めておられますか。
 なお、昨年11月1日、総理は、靖国問題をめぐって、司法のルールにのっとって提訴した方々に対し、世の中おかしい人たちがいるもんだ、もう話にならぬよと発言されましたが、今もそう思っておられますか。また、昨年の発言そのものを現時点でどう評価しておられますか。それぞれお答えください。
 あわせて、既に私人の立場での参拝と国会答弁のある昨年8月と先月の総理の靖国参拝が公式参拝か私的参拝か、官房長官の公式答弁をお願いいたします。
 平成12年度決算検査報告書においては、内閣官房報償費、いわゆる官房機密費の執行体制の改善などが指摘されております。
 この官房機密費については、先ごろ、平成4年4月に、当時の自民党副幹事長であった小泉総理に50万円が贈られたと記載の文書が報ぜられました。総理は記憶にないと言われたものの、完全には否定されませんでした。総理、あり得た話かも含め、御説明ください。
 また、総理は、過日の鈴木宗男議員の秘書逮捕、井上前参議院議長の辞任をどう受け止め、過般の衆参補欠選挙、知事選挙の結果をどう見ておられるのでしょうか。さらに、総理は、政治への信頼回復に向けて今国会中に一歩踏み込んだ対応を取ると述べておられますが、具体的にどう対処されるのか、御説明ください。
 同時に、新たに策定された官房機密費の取扱要領を官房長官よりお示しください。
 昨年、塩川大臣は、官房機密費について、宇野内閣のころは常時四、5000万円入っていて、週に一度くらい会計課長が見に来ていたと具体的に証言されましたが、その後、週刊誌の内容をさも経験したような気持ちで錯覚に陥ったと釈明されました。この経緯を、塩川大臣、心を澄まして御説明ください。
 また、財政法40条を改正し、決算が常会を待たずに速やかに国会提出されるようにすべきだと考えますが、財務大臣に政府の御見解をお伺いいたします。
 戦後2番目の企業倒産、最悪の失業率、それらに裏打ちされた内閣支持率の低下。総理のたぐいまれなるリーダーシップと抜群の協調性に思いを致すとき、ライオンが沈み行く夕日に向かってむなしく咆哮するがごとく、今や小泉内閣に物悲しきたそがれどきが迫りくるを予感しないわけにはまいりません。
 本年3月、総理は、内閣支持率が下がると株価が上がるんだったら、もっと支持率が下がってもいいねとおっしゃいました。さすがは総理、一国の宰相たる者の心掛けかくあるべしと心から感服した次第でございます。
 どうか、小泉総理におかれましては、ますます御壮健にてこれからも内閣支持率の低下に御尽力くださり、もって株価の上昇、ひいては景気の回復と国民生活の安定、向上に御専心くださいますよう心よりお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

〔辻泰弘の質問に対する答弁者〕
 ・小泉純一郎/内閣総理大臣       ・塩川正十郎/財務大臣
 ・竹中 平蔵/経済財政政策担当大臣   ・遠山 敦子/文部科学大臣
 ・福田 康夫/内閣官房長官




 さて、待ちに待った辻泰弘の本会議初登壇は5月8日、全参議院議員注視の中で(?)行われました。衆議院では有事法制の特別委員会があり、その合間を縫って、11時から開会された参議院本会議。初登壇ながら、さっそうと登場した辻泰弘は、ヒツジ年生まれとは思えないような激しさと迫力で、ライオンヘアーの一匹オオカミ・小泉総理に対して、「庶民の幸せを大きく」との熱い思いを込め、果敢に華麗なる闘いを挑みました。
 終わってから数日後、ある先輩議員から、「この間の質問は良かった。何でもいいんだよ。とにかく皆の印象に残ればいいんだよ!」と言われましたが、それが本質をズバリ表しているかもしれません。
(内容もとってもいいんですよ! 念のため・・・。)
 3月末に、「4月初めにあるかもしれないから用意しておくように」と言われて以来1ヶ月以上、平成12年度決算のことばかり追いかけ通しでした。新聞を見ても、テレビを見ても、全てが12年度に関わりがないかと、そのことばかり気になる日々でした。
 ともあれ、本会議での総理に対する初質問を終え、これでまた一つ「本当の国会議員」に近づけたような気がしています。


※「国会ニュース14」(2002.5.31)掲載

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